【徹底解説】仏教🙏の宗派別お焼香マナーまとめ

冠婚葬祭マナー

            ~回数・作法・線香、それぞれのポイントを深掘り~

はじめに

葬儀や法要の場で欠かせない所作といえば「お焼香」。しかし、いざ参列すると「回数は?」「香を額にいただく?」「線香は何本?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
実は、日本の仏教が長い歴史の中で多くの宗派に分かれ、それぞれが独自の作法や慣習を築いてきたことが、こうした戸惑いの理由のひとつです。しかも、同じ宗派であっても地域や寺院によって微妙に異なるケースも珍しくありません。

本記事では、代表的な仏教の宗派別に、お焼香の「回数」「作法(額にいただくかどうか)」「線香の扱い」を整理してご紹介します。あくまでも**“基本形”**のまとめですが、背後にある思想や歴史にも触れながら、現代の葬儀ではどのように実践されているかを解説。最後まで読んでいただければ、いざというときに落ち着いて行動できるはずです。


お焼香の由来と意味

もともと“香”は、古代インドや中国で用いられていた香木の文化が仏教と結びついて日本に伝来し、貴族社会で洗練された「香道」として発展。やがて庶民の葬儀・法要にも取り入れられ、現代に至るまで欠かせない存在となりました。香には**「邪気を払う」「精神を鎮める」**といった力があるとされ、仏や故人への敬意と自らの心を清める意味をあわせ持つことから、各宗派でも重要な作法の一つとなっています。


宗派別のお焼香マナー

1. 浄土真宗(西本願寺)

  • 回数:1回
  • 作法:額にいただかない
  • 線香:1本を折って横に寝かせる

特徴と背景
「阿弥陀仏の慈悲を全面的に信じる」という他力本願を強調する浄土真宗(西本願寺)では、複雑な儀式よりも内面の信心が重視されます。お焼香も1回のみで、額にいただかないのは「すでに阿弥陀仏の救いが行き渡っている」とする考え方から。また、線香を折って横に寝かせる独特の作法も、形式にとらわれず心を込める姿勢を表していると言えるでしょう。

2. 浄土真宗(東本願寺)

  • 回数:2回
  • 作法:額にいただかない
  • 線香:1本を折って横に寝かせる

特徴と背景
同じ浄土真宗でも、東本願寺では2回のお焼香が基本。ただし、多くの参列者がいる場合は1回に省略されるなど柔軟に対応されることも珍しくありません。いずれも額にいただかず、線香を寝かせる点は共通しており、「他力本願」を強調する浄土真宗特有の姿勢が感じられます。

3. 浄土宗

  • 回数:1回~3回
  • 作法:軽く額にいただく
  • 線香:1本~3本を立てる

特徴と背景
法然が「南無阿弥陀仏によって誰でも救われる」という教えを広め、多くの人々に受け入れられた浄土宗では、回数が1~3回と幅があります。軽く額にいただくのは阿弥陀仏や故人への敬意を身体全体で示す意味。線香は1~3本立てる方法が一般的ですが、会葬者が多い時は1回に省略するなど、実際はかなり柔軟です。

4. 曹洞宗

  • 回数:2回
  • 作法:1回目は額にいただき、2回目はいただかない
  • 線香:1本を立てる

特徴と背景
道元禅師による「只管打坐(しかんたざ)」を重視する禅宗の一派。お焼香でも、1回目で自らを省み、2回目は静かに故人へ祈るという二段構えが特徴です。線香を1本のみとするシンプルさには、禅の「無駄を省く」精神が色濃く反映されています。

5. 臨済宗

  • 回数:1回
  • 作法:額にいただかない
  • 線香:1本を立てる

特徴と背景
同じ禅宗でも、臨済宗は公案(禅問答)を用いた厳しい修行が中心で、武家社会との結びつきも深かった宗派。お焼香は1回のみときわめてシンプル。これは「一瞬に集中する」武家気質を象徴するスタイルとも言われ、額にはいただかないことで、余計な動きをさらに削ぎ落としています。

6. 真言宗

  • 回数:3回
  • 作法:3回とも軽く額にいただく
  • 線香:3本を少し離して立てる

特徴と背景
空海(弘法大師)が広めた密教の流れをくむ真言宗では、象徴的な儀式や経文が多いのが特徴。3回のお焼香は「身・口・意」の三密を整える意味などがあり、全てを額にいただくことで仏との一体感を強調。線香3本も、三位一体の世界観を象徴していると捉えられます。

7. 天台宗

  • 回数:1回または3回
  • 作法:額にいただかない
  • 線香:3本を立てる

特徴と背景
最澄によって唐から伝えられた天台宗は、法華経を軸にしながら多様な教えを融合する“総合仏教”。お焼香は1回または3回で、大勢の参列者がいる場合は1回に簡略化されることが多いです。額にいただかないのは、外的な動作よりも内面の修行を重視する天台的な考え方が背景にあります。

8. 日蓮宗

  • 回数:1回~3回
  • 作法:軽く額にいただく
  • 線香:1本~3本を立てる

特徴と背景
日蓮上人が法華経至上主義を説いた日蓮宗は、力強い信仰と布教活動で知られます。お焼香の回数は1~3回と柔軟。軽く額にいただく作法は、法華経の偉大さを身で受け止める意味合いがあるとされ、線香も1~3本と状況にあわせて対応されます。

9. 日蓮正宗

  • 回数:3回
  • 作法:3回とも軽く額にいただく
  • 線香:1本~3本を横に寝かせる

特徴と背景
日蓮宗から派生した厳格な宗派とされる日蓮正宗。3回のお焼香を省略せず、すべて額にいただくのが重要視されます。線香を横に寝かせるのも特徴で、煙が横に広がることで会場全体が浄化され、故人への祈りが広がると考えられています。


実際の葬儀でのポイント

  1. 会葬者が多い場合は1回で統一されることが多い
    宗派ごとに2回・3回の焼香が定められていても、大勢の参列者がいる式では進行を優先して1回にまとめるのが一般的。周囲や司会者の指示に合わせて行動しましょう。
  2. わからなければ周囲を観察・スタッフに質問
    自分とは違う宗派の葬儀に参列する際や、慣れない場合は、他の参列者の様子を見て合わせるか、司会者や葬儀社のスタッフに尋ねるのが確実です。無理に独自の作法を貫こうとするより、式の流れに従う方が安心。
  3. 最終的に大切なのは“故人を思う気持ち”
    どの宗派であれ、根底にあるのは故人や仏への敬意と感謝。もし作法を多少間違えても、真摯な気持ちが伝われば大きな失礼にはなりません。気にしすぎて弔意が疎かにならないよう、まずは静かに手を合わせましょう。

Q&A:よくある疑問

Q1. 宗派ごとの回数や作法に厳密に合わせないと失礼?
A. 実際には進行上の都合で簡略化されるケースがほとんど。むしろ式をスムーズに進めるため、主催者側が「1回でお願いします」とアナウンスすることも多いです。周囲の状況に合わせれば大きな問題はありません。

Q2. “額にいただく”タイミングを間違えたらどうしよう?
A. 葬儀の場は厳粛ではありますが、細かい動作をチェックしている人は少ないもの。万一ずれてしまっても、故人への敬意があれば失礼にはなりません。次から気をつければ十分です。

Q3. 線香の本数が宗派ごとに違うのはなぜ?
A. 3本立てる場合は“仏・法・僧”や“三密”など象徴的な意味が込められ、1本のみの場合はシンプルに祈りを捧げる形を表します。実際には会場であらかじめ本数を決めていることが多いので、備えられている線香の本数や周囲を見ながら対応しましょう。


まとめ

日本の仏教は多様な宗派を抱え、それぞれでお焼香の回数・作法・線香の扱い方が異なります。しかし、多くの場合、実際の葬儀では参列者数や時間の制約を考慮し、1回のみで統一されることも珍しくありません。どの宗派にも共通しているのは、故人や仏への敬意と哀悼の気持ちを大切にする精神です。

もし宗派の作法をすべて覚えきれなくても、焦る必要はありません。周囲の様子を観察し、わからなければスタッフに尋ねれば大丈夫。たとえ作法を多少間違えたとしても、「静かに手を合わせる姿勢」が最も大切なマナーです。

葬儀という場は、単に形を整えるだけでなく、故人との最後の時間を共有し、感謝や別れの思いを伝えるための場所でもあります。お焼香の違いを知りつつも、最終的には心からの祈りを捧げることが最大の供養となるはず。ぜひ、本記事を参考に、臨機応変かつ真摯な姿勢で大切な人を送り出していただければ幸いです。

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