相続税は、財産の金額や相続人の数によって金額が大きく変わるうえ、手続きの期限や必要な書類も複雑で、不安を感じる方が多いテーマです。
このブログでは、相続税の計算方法から申告・納税の流れまでを、できるだけやさしく・具体的に解説します。
基礎控除や税率の早見表、シミュレーションもご紹介するので、相続に関わる方はぜひ最後までご覧ください。

相続税の計算は「4ステップ」で進める
相続税の計算は、一見複雑に見えますが、大きく分けて以下の4ステップで進められます。
ステップ①:相続財産の評価と総額を出す
まずは、被相続人(亡くなった方)の財産の内容と評価額を整理します。
- 土地:路線価または固定資産税評価額で計算
- 建物:固定資産税評価額をもとに評価
- 預貯金:死亡日時点の残高
- 株式・有価証券:評価基準日の市場価格
- 生命保険金:非課税枠超過分を含める
- 借金や葬儀費用などは「債務・控除対象」としてマイナス評価可能
これをすべて足し合わせたものが、相続財産の総額です。
ステップ②:基礎控除を引く
続いて、相続税の「課税対象額」を出すために基礎控除を差し引きます。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、相続人が配偶者+子2人の3人であれば、
3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
この基礎控除を超える部分が「課税遺産総額」となります。
ステップ③:法定相続分で仮に分けて税額を算出
次に、課税遺産をいったん法定相続分どおりに分けたと仮定して、それぞれの税額を計算します。
▶ 税率早見表(2025年現在)
各人の取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
この税率をもとに、各人の“仮の取得分”に対する税額を算出し、合計したものが「相続税の総額」になります。
ステップ④:実際の分割割合に応じて税額を配分
最後に、実際の遺産分割の割合(たとえば、子が多く受け取った、配偶者に全額など)に応じて、個人別の納税額を決定します。
また、配偶者には「配偶者の税額軽減」という特例があり、法定相続分または1億6,000万円までは実質非課税になるケースが多いです。
具体例でシミュレーションしてみよう!
では、簡単な例で計算の流れを見てみましょう。
ケース①:財産7,000万円/相続人2人(配偶者+子)
- 自宅土地:4,000万円
- 預金:2,000万円
- 生命保険金:1,000万円(相続人が受取人)
➡ 財産合計:7,000万円
➡ 生命保険非課税:500万円 × 2人 = 1,000万円
➡ 相続財産評価:6,000万円
基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 2 = 4,200万円
課税遺産総額:6,000万円 − 4,200万円 = 1,800万円
仮に法定相続分で分けると、900万円ずつ。
税率:10%、控除なし
→ 各人の税額:90万円
→ 配偶者は「税額軽減」で0円
→ 実際に納税するのは子1人のみ、90万円
相続税の申告と納税の流れ
■ 申告期限:死亡から10か月以内
- 遺産分割協議が未完でも「一旦申告」が必要
- 税務署に「相続税申告書」を提出
- 期限後は「延滞税・加算税」が発生することも
■ 納税方法と支払いの選択肢
- 原則:現金での一括納付
- 現金が足りない場合は以下の制度が利用可能:
制度 | 内容 | 注意点 |
---|---|---|
延納 | 分割払い(最長20年) | 担保が必要、利子あり |
物納 | 不動産などで納税 | 審査が厳しい、申請条件あり |

相続税でよくあるトラブル例
- 「申告しなくてもバレない」と放置 → 税務調査で重加算税
- 遺産分割がまとまらず、特例が使えず高額な税額に
- 不動産を相続したが、納税資金がなくて売却へ
特に、「あとで分けるから」などの曖昧な話し合いは、節税を損なう原因になります。
次回予告:第3部では「相続税の節税テクニックと注意点」を解説!
シリーズ最終回では、
- 小規模宅地等の特例
- 生前贈与・生命保険の活用
- よくある節税の落とし穴
など、合法的に相続税を減らす方法を取り上げます!
📌 まとめ
- 相続税の計算は「財産評価 → 基礎控除 → 税率適用 → 分割反映」の順
- 税率は累進課税で、財産が多いほど高くなる
- 配偶者には軽減措置あり。遺産の分け方も税額に影響
- 申告・納税は10か月以内が原則。事前準備が大切!