はじめに|長すぎた蜜月に終止符
2025年秋、日本の政治に大きな地殻変動が起きた。
自民党と公明党――約26年にわたって続いた「自公連立政権」がついに解消されたのだ。
このニュースは、単なる政党間の対立ではなく、
**「日本政治の思想的分断」**を象徴する出来事として受け止められている。
その火種となったのが、新たに自民党総裁となった高市早苗氏の登場だ。
保守右派の象徴とも言える高市氏の方針は、
平和と福祉を掲げてきた公明党と根本的に相容れないものだった。
かつて「現実路線」で手を結んだ両党は、
今、再び「理念」で袂を分かつこととなった。
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第1章|高市早苗という“右派の象徴”
高市早苗氏は、自民党の中でも最も保守的・右派的な政治家として知られる。
「自助努力」「国家の誇り」「防衛力強化」を掲げ、
安倍晋三元首相の意思を継ぐ存在として党内外に強い影響力を持つ。
彼女が打ち出した政策の数々は、
これまで公明党が重んじてきた“平和主義・福祉重視”の路線とは真逆の方向を示している。
- 憲法9条への自衛隊明記を推進
- 防衛費をGDP比2%超へ拡大
- 敵基地攻撃能力の保有を容認
- 靖国神社参拝を「当然の行為」と明言
- 道徳教育や伝統的家族観の強化を提唱
これらの発言や政策は、右派層から圧倒的な支持を得る一方で、
公明党の掲げる「対話・共生・平和主義」との隔たりを決定的にした。
「軍備による抑止ではなく、対話による安全を」
——これは公明党が長年掲げてきた信念だ。
だが高市政権下では、そのような理想が“甘い”と切り捨てられる空気が広がった。
政治の風向きが“右”へと急速に傾いた瞬間である。

第2章|公明党のジレンマ:理念と現実の狭間で
公明党はこれまで、連立の中で「バランサー」として機能してきた。
自民党の強硬路線を抑えつつ、庶民の声を政治に届ける存在として、
「右でも左でもない中道政党」という立場を維持してきた。
だが、近年の自民党は「保守右派」の影響力が増し、
そのバランスは崩れつつあった。
防衛費の拡大、改憲議論の加速、愛国教育の導入、
さらには「敵基地攻撃能力」の整備方針まで……。
連立の座を守るために、公明党はたびたび妥協を重ねてきた。
しかし、そのたびに創価学会の支持層からの不満が積もっていった。
「平和を掲げてきた公明党が、戦争の準備に加担するのか?」
党内ではこの問いが繰り返され、
次第に「理念の崩壊」への危機感が強まっていった。
「政権与党であること」が、いつしか「信念を曲げる理由」になっていたのだ。
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第3章|“高市政権”という分岐点
決定打となったのは、2025年の自民党総裁選だった。
右派の支持を一身に集めた高市早苗氏が総裁に就任すると、
政権の方向性は一気に「右」へと舵を切った。
高市氏は就任直後から次々に政策転換を宣言。
- 憲法改正の具体的スケジュールを明示
- 防衛費増額のさらなる加速
- 同盟強化を理由に“防衛省中心”の国家運営構想を提示
さらに、高市氏が打ち出した「選挙区再編」と「選挙協力見直し」が、
公明党との関係を決定的に冷やした。
長年続いてきた「自民=比例票、公明=小選挙区票」の選挙互助システム。
それを高市政権は「見直す」と発言し、事実上“公明切り”を示唆したのだ。
公明党内には激震が走った。
「政治理念でも、選挙でも、もはや連立の意義がない」。
この瞬間、両党の関係は修復不能となった。

第4章|創価学会の存在と「平和への回帰」
公明党の支持母体である創価学会は、
戦争体験の反省を出発点に「絶対平和主義」を掲げてきた宗教団体である。
池田大作名誉会長は、生前こう語っている。
「対話こそ、暴力や戦争に代わる人間の叡智である。」
この思想は公明党の政策基盤にも色濃く反映されてきた。
外交では「対中友好」、防衛では「専守防衛」、
社会政策では「教育・福祉・人権の充実」。
だが、自民党の右傾化とともに、
その“平和主義”は政権内で埋もれていった。
創価学会員の間では、
「もはや自民党の政策は私たちの理念と相いれない」
という声が高まり、党本部にも数多くの意見が寄せられたという。
今回の連立解消は、
「創価学会=平和主義」と「自民党=強権的国家路線」の最終的な決別でもあった。
公明党にとっては、政権を離れてでも“信念を守る”という決断だったのだ。

第5章|「連立解消」の本当の意味
今回の決裂は単なる政治戦略ではない。
それは思想的決裂、すなわち「右派国家」と「中道福祉国家」の分岐点である。
自民党は今後、
- 憲法改正の実現
- 防衛力のさらなる拡充
- 国家の自立と誇りの強調
を掲げ、「強い日本」路線を突き進むだろう。
一方、公明党は、
- 平和外交・対話路線の再構築
- 子育て支援や教育の無償化推進
- 格差是正や人権尊重の政策強化
を中心に据え、「庶民の政党」として原点回帰を図る。
連立という“現実の力”を捨て、
理想に立ち戻る勇気を選んだのだ。
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結び|思想の断絶が示す「新しい時代」
高市早苗政権の誕生がもたらしたものは、
単なる連立崩壊ではなく、日本政治の根幹を揺るがす“思想の断絶”である。
右と中道――。
かつて補い合ってきた両者が決別した今、
政治は再び「力」と「信念」の二つの軸で動き始めている。
公明党が掲げる「平和」「福祉」「対話」は、
もしかすると古臭く見えるかもしれない。
だが、それは人間の幸福を守るための政治の原点でもある。
理想を捨てないこと。
信念を貫くこと。
それが、いま公明党が示した“もう一つの強さ”なのかもしれない。
連立の終焉は、終わりではない。
それは、日本政治の新しい始まりである。